当科が主に行っている内視鏡治療は以下の通りです。
- 食道表在がんに対するESD(図1)
- 早期胃がんに対するESD(図2)
- 大腸腺腫・早期大腸がんに対するポリペクトミー、EMR、ESD(図3)
- 十二指腸腫瘍(非乳頭部)に対するEMR(図4),ESD(図5),EMRO(図6)
消化管グループの内視鏡治療の特徴
内視鏡治療の適応
絶対適応病変
<EMR/ESD適応病変>がんの深さ | 潰瘍 | 分化型 | 未分化型 | 脈管侵襲 | ||
粘膜内 | なし | ≦2cm | >2cm | ≦2cm | >2cm | ly0 , v0 |
0% | 0% | 0% | 2.8% | |||
あり | ≦3cm | >3cm | ≦2cm | >2cm | ||
0% | 3.0% | 2.9% | 5.9% | |||
粘膜下層軽度浸潤 | ≦3cm | >3cm | ||||
0% | 2.6% | 10.6% |
問題なく治療ができ、治療後順調に経過すれば強い痛みを感じることは基本的にはありません。ただ、治療した部位周辺に軽い痛みや違和感を訴える方はおられます。基本的には治療後3日前後で消失します。
治療後は微熱がでることがあります。これは内視鏡治療を行った部位の傷が治癒する過程で生じる人体が反応している熱と考えられます。そのため風邪などの際に生じる熱と異なり、患者さんは自覚しない熱がほとんどあり、きつさなどは感じないことがほとんどです。治療後3日前後で消失します。
鎮静剤や鎮痛剤を使用した場合、その薬剤の効果や代謝の程度によっては軽度の頭痛や吐き気を自覚することがあります。ただし、治療後2日前後で消失します。
治療後の傷から出血した場合は突然吐血、下血、血便として症状が出現することがあります。一般的には治療後24~48時間以内が多い印象ですが、入院期間中はこれらの症状がないかを毎日観察します。出血が疑われる場合は緊急で内視鏡を行って止血術が必要なこともあります。内視鏡で止血できない重篤な出血の場合は血管造影による塞栓術や緊急外科手術となる可能性もあります。
治療中、治療後に病変を切除した部位の壁に穴が開いてしまうことです。当院では全ての臓器(食道・胃・大腸・十二指腸)において発生頻度は1%以下です。治療後に穿孔が生じれば、高熱や強い腹痛(腹膜炎の症状)が生じることがあります。治療後に穿孔を疑えば各種検査(血液検査・腹部X線・腹部CT検査など)を行い、早急に穿孔の診断を行います。穿孔と診断した場合でも、軽症の腹膜炎の場合は抗生物質の投与による保存的治療、可能な場合は緊急内視鏡検査および内視鏡クリップを用いた穿孔部の閉鎖(穴を閉じる)を行います。しかし、穿孔の程度が大きく、重篤な腹膜炎を生じた場合や内視鏡で対応できない穿孔の場合は緊急外科手術の可能性もあります。
内視鏡治療を受けられる方の背景には様々な基礎疾患をお持ちの方、ご高齢の方もおられます。治療を受けられる前や後に治療とは全く関連性のない予期せぬ重篤な疾患(心血管・脳血管疾患)やその他何か不測の事態が起こる可能性があります。私たちは常にこのような不測の事態に備えて対応できる体制をとっておりますし、その都度きちんと説明、最善の対処を行うことで対応いたします。また、実際に治療を行っても内視鏡では病変が取れない事や途中で中止(内視鏡治療適応外であった・治療を継続すると患者さんに危険が及ぶなどの様々な理由)する事もありえます。これらのことを十分ご理解いただいた上で内視鏡治療を受けて頂く必要があります。